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☆ バイバイ ☆

 物書きが、自ら命を絶ってしまう事が多々ある。書く事に限らず物を創る人にそれは多い。
 今週の室井佑月さんのBlogはキラリと光る記事であった。その中の内田春菊氏の言葉に「物書きが自ら死を選ぶっていうことには、なんらかの意味があると思う。~」とある。

 まずは何故ゆえ物書きがそういう方向に向かってしまうのかという事についてわしなりに語らせていただく。それはある方向へ向かうというより、そういう“性質”だったという方が的確かもしれない。または、そういう性質になった、でもよい。つまり、優れた物書きは自らの死を選びやすい性質の持ち主という事である。早い話、繊細で対人アンテナが敏感なのだ。
 例えば、優れた詩人であった中原中也。中也が死んだ後に小林秀雄が寄せた文を介し明治大学のある教授がこう言っている。「中也にはあえて“強くならない覚悟”がある。(中略)強くなってしまう事で心のアンテナが鈍るのを中也はいちばん恐れていた。心の弱い時にしか感じられないような微妙な寂しさをキャッチするのも、十三、四歳の思春期でああればお手のものだろう。(中略)普通の人が一瞬だけ感じるようなものを中也は生涯にわたって感じ続けてしまったわけだ」。優れた物書きとはそういう性質を持ち合わせているものだと、わしは思う。感受性の高さから優れた作品を生み出すが、反面自らを死に追いやる危険性も持ち合わせているというわけだ。リスクの高さと高潔さは比例するとしたならば、物書きほど素晴らしい人種はない。少なくとも、わしにはそう思える。

 まずはそういう性質ありきだという事を認識したうえで、前述の「~なんらかの意味があると思う」について。
 ショーペンハウエルの『自殺について』の一文にこういうのがある。「意志は、自殺する個人の死などには頓着せずに、それ以外の数限りない個体の中で、依然として生きながらえているという事が、全ての人の確信となって、事実上、承認されている」と。これは内田さんと同じ事を言っている。そう、命をかけて渡せるバトンが、そうしてまで渡したいバトンが、自ら死を選んだ物書きの方にはあったのだ。
 自ら死を選ぶ者にはそれぞれの理由があるだろうが、多くの場合、つまりおおよその確率が高いであろう理由を、物書きで限定してわしなりに算出してみる。先に述べたように、物書きとは大概感受性が高く繊細である事が多い。そういう方々が身をもって訴えたい事、それは『性悪説』ではなかろうか。つまりその行為自体が神への反抗心の顕れなのである。
 荀子、マキャベリらはそれを説いた。真実が益を成すとは限らないものだから、いや、かえって隠蔽しておいた方が都合が良いからその類の説は歴史的にみても教育上、公には取り上げられる事は少ない。それどころか悪書とされる事が多い。
 アンテナが敏感であるという事は、人間本来の性質をも見抜いてしまうのであろう。神がその本来の性質(人間界では悪と定義されている性質)自体をプログラムしたならそれを促す神は現代の倫理からすれば“敵”である。つまり、現代における善行とは神の意志に反する事になる。わかりやすくいうと良い事をする事は神に反抗している事になるのである。任天堂のポータブルのゲーム機のソフトに「SAGA」というのがあるらしくてそれの最後に倒さないといけない相手が「神様」だという。これは米国で発禁になった。キリスト教が主な国でそれはいただけなかったのだろう。これを創った人は感受性が高く人間と神との間の矛盾を感じたのかもしれない。ロックやパンクな音楽が多感な時期に受けるのもなにか得体の知れないものに反抗したい衝動が沸き起こるからなのではなかろうか?アンテナな敏感なんである。
 先に紹介したショーペンハウエルの『自殺について』はちょいと危険であるから、死にたい願望がちらつく人にはお薦めできない。自殺をあまり悪いものとして記してないからである。死をもってしてでも輝やかないといけない時がある~、と芯をおくのは三島由紀夫や小林よしのり的だが、ショーペンのそれにはフォローに欠ける。

 最後にひとつわしから言わせてもらうと、もったいないから自らは死なない方がいい。
 志高く散る覚悟の自殺にしても、どん底からの脱却の自殺にしても、鬱からくる原因の解明できない自殺にしても、そんな念慮に憑かれている自分を嗤おう。そして少し寝て、起きたらボーッとしながら窓の外でも見ながらコーンフレークでも食べた後、死にたいなんて微塵も思わなかった子供時代に楽しかった事に夢中になるのだ。恥ずかしい事はない、男の子ならミニカーで女の子ならリカちゃんで、思う存分堪能したらまた日常に戻ろう。
 今後、そういう事を思った事実を誇りに思って生きていい。

 死にたいなんて思わなかった人生より絶対輝くから。

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